46. 千年一夜
by:りょう太郎
「千年前からずっと貴方についている霊。良い影響をもたらさない・・。
貴方はそれを主君のお供の道行きでH神社で拾ってしまった・・。」
と一ヶ月前の日宗先生の霊視で言われた。
「そうだ、丁度一ヶ月後にこの神社の大祭があります。その日、その場所に返してくるといい」
今まで、おだやかに話されていた先生が、急にマジな顔に・・
「行けますかっ?!」 先生の顔が俺の目前にドアップで迫る・・おお〜〜!!
(本当は違うんだろうけど、その時の俺はそう感じてしまった。-
行きなさい!行って貴方の開運の妨げとなっているモノを、取り除くんです! という無言の圧力を)
それから どうしたものかと、考える日々・・
(確かに自分は大事な時に、無意識に発する言葉で トラブルを呼ぶことがある)
しかし、
本当に行かなきゃまずいのか・・・。
一人で行く自身がない・・でも、先生方の付き添いが必要とも言われてない・・。
第一
ちゃんとその場所に返せたかどうか。霊能者でもない、俺がどうやってわかる?
東京から、遠路はるばる行って、1000年以来の荷物、返せなかったらどうするよ・・
―― その時、以前、呪詛解きでお世話になった宗円先生の顔が浮かんだ ――
「時は金なり」 いや 違った、「善は急げ」!だ。
即刻、電話をし、事情を話し、同行頂けないかお願いをした。
しばらく、考えていた宗円先生から
「わかりました、奈良からなのでかなりハードなものとなりますが、一緒に頑張りましょう」
と、言ってもらえた時は、本当に嬉しかった。
そして、その日はやってきた。
念には念を入れて、宗観先生の気合のタップリ入った、
お守り札を胸ポケットにいれ(勇気百倍。 準備は万全だ!)、
宗円先生との待ち合わせ場所、東京駅へと向かった・・・・・。
東京から車で走る事四時間余り。
めざした、H神社に到着。 神社は 朝から 大祭の準備で 大賑わいだ。
ところが、神社の境内、隅から隅まで、歩いてみたが、日宗先生の言われた場所が見当たらない・・
(千年前の祠だもんなあ〜〜 先生には当時の映像が見えていたのだろうが、 千年経てばなくなっていて、当たり前だよ)。
「どうすりゃいいんだ! 無駄足かよ・・」
そのとき、がっくり来ている肩のうしろから、宗円先生が言った。
「Rさん、 古くからこの土地に馴染みのある方たちに、聞いてまわりましょうか」。
それから、宗円先生が、祭りの関係者の世話役の方たちに、聞いて回ってくれたが 皆誰もが、首をふるだけ・・
とどめに、神社の宮司の方に、「わからない。聞いたこともない」、と言われた時はさすがに、倒れそうになった・・。
一時間、その町を歩き続けて・・段々、自分の気持ちもすさんできた。
「宮司だって知らないんだ。ここまで来たんだから、神社に挨拶させてもらって失礼すればいいや」
なかば、なげやりな気持ちになった。
その時だった。祭りの関係者で朝から心配してちょくちょく声を掛けてくれた老人が、また、自分たちに声をかけてくれた
「もと有ったらしい、場所はなんとなくわかったよ。でも 風化してしまって、かなり前に祠は撤去されたんだと。 だから宮司もわからなかったんだよ」
天はわれらを見捨てなかった!(じいさん、何ていい人なんだ!)。
それから、H神社にとってかえし、教えて頂いた場所に行き、ちょい、人目が気になったけど・・
兎に角 一心不乱にその土地に戻るよう祈り続けた。
(何だか、視線を感じるけど・・ いいんだ。俺は 今日やるべき事だけをやれば・・!)。
神社へと向かう戻り道 途中も・・ 何だか、むかむかしていたのだが。
その場所に立ち、一心に祈ると、やはりというか、吐き気が込み上げてくる・・。
それから、いつも滅多にでない、咳が出て・・。
自分的には 理解に苦しむ体の変化が。
そんな、俺の背後から、宗円先生が 助けてくれた。
魔切り、なのだろうか。 当然自分は俯いていたから、何をやって頂いてるのかもわからないけど。
ひとしきり、吐き気が収まった頃。5分くらい経った頃だろうか。
「もう、いいでしょう。Rさん。 帰りましょうか」
宗円先生に、促され、神社をあとにした。
そして、また、四時間かかって、東京へと帰ってきた。
自宅に帰って、一息。
ビール片手に、テレビのスイッチオン。
「おっ。 演歌特集か・・・」。
和風美人の演歌歌手がテレビにアップで映った。
伏し目がちに歌い始める・・
「千年前から〜。
命を繋げて・・・ いのちがつきても 離れない〜」
JUST MEET!
思わず、ビールを吹いてしまった!
何故、なんで 今、このタイミングでこの歌 ??
日宗先生の一月前の霊視以来−。
すべてが、組み込まれた歯車のように。
もし、日宗先生のアドバイスが無かったら、
もし、宗円先生という助っ人がいなかったら、
もう 千年 生まれ変わっても、同じ状態をひきずっていたんだろうな。
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