38.筑波山での奇跡
これは今から約20年も前に起きた出来事です。
当時の私の修行場所は山梨県の【七面山】でしたから、もっと近場で修行が出来る場所はないものかと思い、
探していた時に見つけたのが茨城県の【筑波山】でした。
【筑波山】の標高は877m。
いつも登詣している【七面山】は1982mでしたから、【筑波山】は比較的に行きやすい御山かなと思っておりました。
朝6時半頃に千葉県柏市の家を出発し、8時頃から【筑波山】を登詣し始めました。
私は出来る事なら昔ながらの参詣道を歩きたいと思い登り始めたら、その道が途中で無くなってしまっていたのです。
今はロープウェイで参詣される方々が多くなりましたので、昔ながらの参詣道は草や木々で覆われてしまったのでしょう。
その時の私は「【筑波山】の標高は877mだから、直線的に登っても行けるだろう。」と安易に思ってしまいました。
私は軽い気持ちで【筑波山】を直線的に登り始めると、まもなく雨が降り出しました。
その雨は次第に強くなり、辺りには霧が立ち込めて、一寸先も見えなくなってしまいました。
下山するにしても雨のために地面が滑りやすい状態になり、転倒でもしたら危険極まりない状態になってしまったのです。
そこで私は暫く様子を窺う事にしたのですが、霧はドンドン濃くなるばかりでした。
これは私が【筑波山】を甘く見ていた罰があたったのだと思い、私はすぐに【筑波山】の神様に謝りました。
真剣に謝り続けている時でした。目の前にうっすらと細い道が見えて来たのです。
私は「この道だ!」と思い、その道に従って登り始めました。
暫くすると、他の登詣者の声が聞こえて来たので、一般的な登山道が近い事を確信し、安心して後ろを振り返ってみると、
今まで私が登って来た細い道はどこにもありませんでした。
その時の私はまさに狐につままれたような思いがしました。
私にはハッキリと見えていたあの細い道が、実は幻だったのです。
それはまさに【異界百名山】のようでした。
あれは【筑波山】の神様が憐憫の情で私を救ってくださったのでしょう。
あれ以来、私はどんな御山を登る場合でも侮って登詣した事はありません。 人生は【恐れず侮らず】です。
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