これは、中国でのお話です。
ある時、修行僧のAとBがお師匠様から遣いを言い渡された時の事です。
AとBは出発の際にお師匠様から「道中は決して女性にとらわれる事なく行くのだぞ!」と言われ旅立ちました。
修行道場を出発して数日後、二人の僧が川を渡ろうと川岸に近づくと、増水した川を渡れずに困っている女性を見つけました。
僧侶Aは、すぐさまその女性を抱きかかえると対岸へと運び、女性を岸に降ろすとまたすぐにスタスタと歩いて行きました。
それから20~30分程歩いた頃、突然、僧侶Bが
「お前は先程、お師匠様の言いつけに背き女性の体に触れたが、お前はお師匠様との約束を忘れたのか!」と責め始めたのです。
すると僧侶Aは「何の事だ・・・?お前はまだ、そんな事にとらわれて歩いておったのか・・・」
と言って、またスタスタと何もなかったかのように歩き出して行きました。
皆さんは、この中国の修行僧の話を聞いてどう思ったでしょうか?
Bという僧侶は真面目な男で、Aという僧侶はとぼけた男だなぁ~と思いましたか?
この物語は女性に触れた事の良し悪しだけでなく、
【女性の事も含め、一つの事に対して】いつまでもとらわれているようではいけませんよ!という教えの話なのです。
【とらわれる】という事は、ある意味自分自身に【呪縛】をかけてしまっているようなものです。
何かにとらわれてしまうと、人は心を乱し平常心を失ってしまいます。
僧侶Aが女性を助けた後、AとBは共に同じように歩き続けていたわけですが、心の中は全く違っておりました。
僧侶Aは黙々と無心で歩き続け、僧侶Bは歩く事に集中するどころか、悶々とした頭で歩いていたのです。
このような状態で同じ修行を続けて行ったとしたら、この二人の僧の成長の差は甚だしいものになって行った事でしょう。
この世で与えられている時間は、無限ではありません。
だからこそ、その大切な時間を過ぎ去った事にとらわれるあまりに【今】という大切な時間を疎かにしてしまっては勿体なさ過ぎます。
いつまでも過去の出来事にとらわれ過ぎると前に進めません。
常に何事にもとらわれる事なく【今の考え】・【今の行動】を大切にして行く事が大事です。
私が【前世を知る事の大切さ】を言うと、誤解されてしまう事があるのですが、
これは別に後ろ向きの人生を歩ませるために言っているわけではありません。
私は相談者の皆さんに自分自身の前世(過去世)での失敗を知ってもらった上で、
同じ失敗を繰り返さないようにするために言っているのです。
同じ失敗を繰り返さないためには、【忍耐力】をつける事がとても重要です。
私の相談所に通って来ているSさんという方がおります。
このSさんは、十年近く他人を怨んで生きて来たらしいのですが、ある時フッと気づかされた事があったそうです。
それは『いつまでも他人を怨んでいると、結局は自分が惨めになるだけ・・・もう相手を許してあげよう!』と思ったのだそうです。
すると、急に自分自身の心が楽になったという事でした。
考えてみると、確かに相手をいつまでも憎んでいる人の顔というのは、鬼のような形相になっているものです。
相手の失敗や過失を許してあげるという事は、なかなか出来にくい事ではありますが、
先程のSさんのように心が育って来た人であれば、それが出来るのです。
皆さん【とらわれない心】を育てて行きましょう!